「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第52条第1項」、「障害者の雇用の促進等に関する法律第43条第7項」において、事業主は、毎年6月1日現在の高年齢者および障害者の雇用状況等を、管轄の公共職業安定所(一部地域では労働局)を経由して厚生労働大臣に報告することが法律で義務付けられています。
報告は、総務省e-Gov電子申請システムを使用する電子申請による方法のほか、郵送または来所により提出できます。
高年齢者雇用状況等報告書は高年齢者雇用安定法に定められた65歳までの雇用確保措置及び70歳までの就業確保措置の実施状況等を把握するとともに、必要に応じ各企業に対し公共職業安定所等による助言・指導等を行うための基本情報として用いられます。
高年齢者雇用安定法第10条及び第10条の3の各項において、厚生労働大臣は高年齢者等職業安定対策基本方針に照らして、必要な指導及び助言をすることができることとなっており、指導及び助言に従わない場合は、当該事業主に勧告することとなります。
さらに、65歳までの雇用確保措置に関して勧告に従わない場合は、企業名の公表をすることができることとなっております。
65歳までの雇用確保(義務)について
60歳未満の定年禁止について(高年齢者雇用安定法第8条)
事業主が定年を定める場合は、その定年年齢は60歳以上としなければなりません。
65歳までの雇用確保措置について(高年齢者雇用安定法第9条)
定年を65歳未満に定めている事業主は、以下のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じなければなりません。
①65歳までの定年引上げ
②定年制の廃止
③65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)の導入※1
(自社及び特殊関係事業主※2に限る。)
※1:65歳までの継続雇用制度を導入する場合には、原則として希望者全員を対象とすることとなっていますが、平成25年3月31日までに労使協定(過半数労働組合等との書面による協定)により対象者を限定する基準(以下「基準」といいます)を定めている事業主については、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢(令和4年4月1日からは64歳)以上の者に対して基準を引き続き適用できる経過措置を設けています。
※2:特殊関係事業主とは、自社の①子法人等、②親法人等、③親法人等の子法人等、④関連法人等、⑤親法人等の関連法人等を指します。
70歳までの就業機会の確保(努力義務)について(高年齢者雇用安定法第10条の2)
改正法により、65歳までの雇用確保(義務)に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するため、以下のいずれかの措置(高年齢者就業確保措置)を講ずる努力義務※が新設されました。(令和3年4月1日施行)
①70歳までの定年引上げ
②定年制の廃止
③70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)の導入
(自社及び特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)
④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
※就業確保措置は努力義務であることから、対象者を限定する基準を定めることが可能です。このとき、基準の内容について、過半数労働組合等の同意(労使合意)を得ることが望ましいです。
70歳までの継続雇用制度について
65歳以降の継続雇用については、特殊関係事業主以外の他社で継続雇用する制度も可能になります。※
・60歳から65歳までの継続雇用(雇用確保措置)の場合:自社、特殊関係事業主
・65歳から70歳までの継続雇用(就業確保措置)の場合:上記の事業主および特殊関係事業主以外の他社
※特殊関係事業主等(特殊関係事業主または特殊関係事業主以外の他社)で継続雇用する場合には、自社と特殊関係事業主等との間で、特殊関係事業主等が高年齢者を継続して雇用することを約する契約を締結する必要があります。
障害者雇用状況報告書の提出義務と提出方法等
障害者雇用状況報告書の提出義務と提出方法等については、報告義務のある事業主は、企業全体の常用雇用労働者(除外率により除外すべき労働者を控除した数)が43.5人以上の事業主(独立行政法人、公団、公庫等の一定の特殊法人(障害者の雇用の促進等に関する法律施行令別表第2に掲げる法人)については常用雇用労働者が38.5人以上の事業主)です。
(雇用している障害者数が0人の場合でも報告義務があります。)
※この報告をしない場合又は虚偽の報告をした場合は、障害者雇用促進法第86条第1号の規定により、罰則(30万円以下の罰金)の対象となります。
この常用雇用労働者とは、雇用契約の形式如何を問わず、1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者であって、次の①~④のように1年を超えて雇用される者(見込みを含みます。)をいいます。なお、1週間の所定労働時間が20時間未満の方については、障害者雇用率制度上の常用雇用労働者の範囲には含まれません。
※昼間学生や2つの事業主に雇用されている労働者、A型事業所(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則(平成18年厚生労働省令第19号)第6条の10に規定する就労継続支援A型の事業を実施する事業所をいう。以下同じ。)に雇用される労働者であっても、週所定労働時間が20時間以上である労働者は常用雇用労働者となります。
※外国人労働者(技能実習、特定技能を含む)についても常用雇用労働者に含まれます。
①雇用期間の定めのない労働者
②1年を超える雇用期間を定めて雇用されている者
③一定期間(1か月、6か月等)を定めて雇用される者であり、かつ、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている者、又は雇入れのときから1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者(1年以下の期間を定めて雇用される場合であっても、更新の可能性がある限り、該当します。)
④日々雇用される者であって、雇用契約が日々更新されている者であり、かつ、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている者又は雇入れの時から1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者(上記③同様。)
※なお、「雇入れのときから1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者」に該当するか否かを判断するに当たっては、次の(イ)又は(ロ)の場合に該当するものとして取り扱います。
(イ)雇用契約書、雇入れ通知書等において、その雇用が更新される旨又は更新される場合がある旨が明示されている場合
ただし、更新回数等の上限が併せて明示されていることにより、1年を超えて雇用されないことが明らかな場合はこの限りではありません((ロ)に該当する実態にある場合を除きます。)
(ロ)雇用契約書、雇入れ通知書等において、その雇用が更新されない旨が明示されている場合又は更新の有無が明示されていない場合であって、類似する形態で雇用されている他の労働者が1年を超えて引き続き雇用されている等の更新の可能性がある実態にある場合
障害者雇用率制度や障害者雇用納付金制度の適用に当たっては、各事業主において、障害者である労働者の人数、障害種別、障害程度等を把握・確認していただく必要がありますが、これらの情報については、個人情報保護法をはじめとする法令等に十分留意しながら、適正に取り扱っていただく必要があります。
また、今般の障害者雇用促進法改正に伴い、精神障害者に対して雇用率制度が適用されることになりましたが(平成18年4月施行)、特に在職している精神障害者の把握・確認の際は、プライバシーに配慮する必要があります。
このため、障害者本人の意に反した制度の適用等が行われないよう、制度の対象となるすべての障害者(身体障害・知的障害・精神障害)を対象として、「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」を策定しました。
企業の皆様におかれては、このガイドラインにより、障害者の適正な把握・確認に努めていただくよう、お願いいたします。
厚生労働省