医療法人社団B事件から学ぶ、ハラスメント対策のポイント

2023年10月に判決が確定した医療法人社団Bテラス事件は、中小企業の人事労務担当者にとって、ハラスメント対策の重要性を改めて認識させる事例となりました。本記事では、この判決のポイントを解説し、中小企業における具体的な対策についてご紹介します。

目次

事件の概要と判決のポイント

本件は、歯科医院の院長による歯科医師へのハラスメントが問題となった事件です。裁判所は、院長の地位や立場を考慮すると、他の従業員と一緒になって被害者を揶揄する会話に興じることは、客観的にみて、それ自体が被害者の就業環境を害する行為に当たるとして、慰謝料の支払いを命じました。

主な判決のポイント

  • 秘密録音の証拠能力の肯定: 従業員が秘密裏に録音した内容が、証拠として認められました。
  • 本人がいない場での発言もハラスメントに: 院長が、被害者がいない場所で他の従業員と被害者を揶揄する会話を行ったことが、ハラスメントと認められました。
  • 使用者の安全配慮義務: 使用者は、従業員が安心して働けるような環境を整える義務があります。

中小企業におけるハラスメント対策のポイント

1. ハラスメント防止に関する規程の整備

  • ハラスメントの定義: ハラスメントの種類(セクシュアルハラスメント、パワーハラスメントなど)を明確に定義し、具体的な行為例を挙げる。
  • 禁止事項: ハラスメント行為を禁止し、違反した場合の処分について規定する。
  • 相談窓口: 相談窓口を設置し、相談しやすい環境を整える。
  • 調査・処分の手続き: ハラスメント行為が疑われる場合の調査・処分の手続きを定める。

2. 従業員への周知徹底

  • 定期的な研修: ハラスメント防止に関する研修を定期的に実施し、従業員全員がハラスメントについて理解を深める。
  • ポスター掲示: 社内には、ハラスメント防止に関するポスターを掲示し、常に意識させる。

3. 相談窓口の設置と運用

  • 専門の相談窓口: 弁護士や社労士など、外部の専門家に相談窓口を委託することも検討する。
  • 匿名での相談: 匿名で相談できる体制を整える。
  • 迅速な対応: 相談を受けた場合は、迅速かつ適切に対応する。

4. 上司・管理職への指導

  • ハラスメント防止研修: 上司・管理職に対して、ハラスメント防止に関する研修を重点的に行う。
  • リーダーシップ研修: リーダーシップに関する研修を行い、部下とのコミュニケーション能力を高める。

その他の注意点

  • 無断録音について: 従業員が職場で会話を録音することは、会社内での自由な会話が阻害される可能性があります。録音禁止のルールを設けることも検討しましょう。
  • 本人がいない場での発言: 本人がいない場所での発言も、ハラスメントに該当する可能性があることを認識しましょう。
  • ハラスメント被害者の欠勤: ハラスメント被害にあったと主張する者が欠勤する場合、まずは事実関係を調査し、適切な対応を取る必要があります。

まとめ

医療法人社団Bテラス事件は、中小企業においてもハラスメント対策が重要であることを示しています。ハラスメントは、従業員のモチベーション低下や離職につながるだけでなく、企業イメージの低下にもつながる可能性があります。本記事で紹介した対策を参考に、自社にあったハラスメント対策を講じましょう。

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この記事を書いた人

練馬区のワダ社会保険労務士事務所

地域密着型の社会保険労務士として、主に中小企業のみなさまをのお手伝いをしています。
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