政府は、全世代型社会保障構築会議の第4回会合を開き、中間整理の案を取りまとめました。中間整理の案には、健康保険・厚生年金保険の加入者を拡大する形で実現させようとしている「勤労者皆保険」が盛り込まれているほか、子育て支援策として育児休業制度の見直しなどが盛り込まれています。
令和4年10月から、短時間労働者への社会保険の更なる適用拡大や、出生時育児休業の導入といった重要な制度改正が施行されますが、その先の制度改正の議論が進められていることになります。政府は、この中間整理を本年5月中に正式決定した上で、政府が6月ごろに策定する骨太の方針(経済財政運営の基本指針)に反映させることとしています。
議論の整理
1.全世代型社会保障の構築に向けて
2.男女が希望どおり働ける社会つくり・子育て支援
・男性の育児休業の取得促進に向けて、本年10月に施行する「産後パパ育休制度」の十分な周知と検証が必要。
・非正規雇用労働者について、育児休業に係る権利を希望に応じて行使できるよう本年4月に施行する改正育児・介護休業法による労働者への休業の意向確認、雇用環境整備及び有期雇用労働者の取得要件緩和等を徹底することが重要であり、必要に応じて更なる対応を検討。
・短時間勤務制度についてもキャリア形成に配慮しつつ希望に応じて利用できる環境整備が必要。
・「新子育て安心プラン」等に基づく保育サービスの基盤整備や放課後児重クラブの整備等を着実に実施。また、短時間労働者等が保育を利用しづらい状況を改善する必要。
・今通常国会にこども家庭庁の創設に関する法案及び児童福祉法等の改正法案が提出されているが、これらを含め、こどもが健やかに成長できる社会の実現に向け、様々な事情を抱えたこども・妊産婦・家庭をはじめ、子育て支援の強化を検討。
3.勤労者皆保険の実現
・働き方の多様化が進む中、勤労者皆保険の実現に向けて取組を進める上で、使用されている勤労者であれば、被用者保険(厚生年金・健康保険)も同じように適用されることを目指すべき。
・まずは、企業規模要件の段階的引下げなどを内容とする令和2年年金制度改正法に基づき、被用者保険の適用拡大を着実に実施する。更に、企業規模要件の撤廃も含めた見直しや非適用業種の見直し等を検討すべき。
・フリーランス・ギグワーカーヘの社会保険の適用については、まずは、被用者性等をどう捉えるかの検討を進めるべき。
4.女性の就労の制約となっている制度の見直し
・社会保障や税制、企業の諸手当などについても働き方に中立的なものにしていく必要。
・被用者保険の適用拡大は、いわゆる「130万円の壁」を消失させる効果がある。
・いわゆる「106万円の壁」についても、最低賃金の引上げを図ることにより、ある程度問題解決が図られる状況になりつつある。
5.家庭における介護の負担軽減
・圏域ごとの介護ニーズの将来予測を踏まえた介護サービスの基盤整備を着実に実施。
・男女ともに介護離職を防ぐための対応が必要。
・認知症を抱える方の家族やヤングケアラーを含め、支援を行う方に対する支援を行う必要。
6.「地域共生社会」づくり
・多様な困難に陥っている方に対するソーシャルワーカーによる相談支援や、多機関連携による総合的な支援などにより、地域住民が地域で安心して生活を送ることができるようにすることが重要。
・今後、独居の困窮者・高齢者等の増加が見込まれる中にあって、医療・介護・住まいの在り方を一体として考えていく必要。
・ハードとしての住宅の提供のみならず、地域とつながる居住環境や見守り・相談支援の提供をあわせて行うことも重要。その際、空き地・空き家の活用やまちづくりの視点から各地方自治体において地域の実情に応じた対応を検討することが重要。
7.医療・介護・福祉サービス
・ICTの活用により、サービスの質の向上、人材配置の効率化などを進めることが重要。
・電子カルテ情報及び交換方式等の標準化を進めるとともに、健康診断等で得られる個人の医療情報を、自分で管理・活用することができる将来像を見据え、個人・患者の視点に立ったデータ管理の議論も重要。こうした取組は、効率的な医療の提供や、患者の利便性の向上にもつながるとともに、創薬などの研究開発の促進にも資する。
・医療・介護提供体制改革などの社会保障制度基盤の強化については、「地域完結型」の医療・介護サービス提供体制の構築を進めるとともに、地域医療構の推進などこれまでの骨太の方針や改革工程表に沿った取組を着実に進める必要。また、コロナ禍で顕在化した課題や得られた教訓も踏まえ、機能分化と連携の視点を一層重視した医療提供体制等の改革を進める必要。
内閣官房